みゆき野球教室

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酒とバラの日々 Days of Wine and Roses

私のコンプレックスのひとつに、酒が飲めないことがある。
母は酒豪だった。父は少し飲んだだけで顔が真っ赤になる人だった。私はどちらかというと、父の遺伝を受け継いだ。
 
酒が飲めなくて困るのは、仕事の場。最近では飲まない権利も認められてきたが、以前は「俺の酒が飲めないのか」というハラスメントが横行していた。私はその都度、「あんたの酒であろうと誰の酒でも飲めないものは飲めない」とはっきり断ってきたが、そのせいで広い世界を狭くしか生きられかった。
 
適度な飲酒は健康にいいと言われてきたが、最近では少量でもアルコールの毒性による健康への害があるという風潮になってきた。一説によると、大麻よりも毒性が強いらしい。未来からタイムトラベルで現代に来た人は決まってアルコールは未来世界では禁止になっているという。
 
酒とバラの日々」というタイトルを見たとき、ロマンチックな映画だと思った。ヘンリー・マンシーニが書いた主題曲も美しいし、大好きなジャック・レモンも出ている。期待して観たらとても救いのない映画だった。
 
ジャック・レモン演じるジョーは、得意先のパーティでのちの妻となるカーステンと出会う。ジョーは酒好きで、カーステンは酒が苦手だった。二人は惹かれあい、結婚して幸せな家庭を築くが、ジョーの酒の上の失敗で出張が多くなり、カーステンは寂しい日々を送る。やがて、それを紛らわすために酒の力を借りる。二人は次第に酒がないと生きていけないようになる。落ちるところまで落ちて再起を誓うが、その先もハッピーエンドにはならない。
 
私は幸いにして酒に救いを求めるほどの挫折を味わっていない。否、挫折はしたが、酒ではなく自分の心を傷つけることで正気を保った。結果、うつ病を悪化させて、死の直前まで行った。だから、酒に溺れる気持ちはわからない。おそらく辛いだろう。やめようと思ってもやめられない苦しみ。筆舌に尽くしがたいと想像する。
 
この映画はハッピーエンドにしなかったことに価値があると思う。厳しい現実を観ている人に投げかけている。そこから何を学び取るかはその人次第だ。私は、アルコール中毒は甘えとか逃避ではなく、病気であるという認識を得た。
 
私は酒が飲めなくてよかったと思っている。この先も、酒を飲まずに済むように願っている。