みゆき野球教室

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ティファニーで朝食を Breakfast at Tiffany’s

私はネコが好きで、いつかは一緒に暮らしたいと思っているが、ネコを飼う資格がない人間だ。

幼稚園に通っている頃、近所の駄菓子屋に「かわいい子ネコ差し上げます」という貼り紙を見た私は、どうしても欲しくなってもらいに行った。駄菓子屋のおばちゃんはかわいがってねと言って売り物の牛乳を一本と共に子ネコを手渡してくれた。
大喜びで帰宅したら、母が冷たい声で「捨ててきなさい」と言う。借家住まいの我が家はペットの飼育が禁止だった。その上、母は幼少期にネコの霊に取り憑かれたと言ってネコを嫌っていた。必死の抵抗むなしく、私は泣きながらネコを捨てに行った。おそらく、すぐに死んでしまったことだろう。今思い出しても、胸が潰れそうになる。
小さな命を見殺しにした私はネコを飼う資格がない。
 
殺したのはネコだけではない。白い文鳥を飼っていた。ペット禁止といっても、小鳥と金魚は飼ってもよかった。「シロ」という安直な名前がついた白い文鳥はたまに部屋の中で自由に遊ばせていた。そんな時、誤って踏み潰した。実は、これに関しては記憶がないのだが、おそらくはつらい気持ちで潰れないように自己防衛機能が働き、記憶が消去されたんだろう。
 
私は血も涙もない人間だ。ネコや小鳥といった小動物だけでなく、人間に対しても極悪非道だった。
若い頃、同棲していた相手の人生を台無しにしてしまった。その人はアニメーターになる夢を持っていて、希望どおりアニメ制作会社に就職して動画担当になった。
1枚あたり60円から100円の単価で寝る間を惜しんで働いたが、いくら働いても二人で暮らしていくことができず、アニメーターを辞めて給料のいい仕事を掛け持ちして私を養ってくれた。結局、その生活に疲れて、冬の朝、黙って出て行った。
私がネコだけでなく、人とも一緒に暮らせないのは、こんな過去の報いかもしれない。私の人生は贖罪の人生なのかもしれない。
 
心を病んで死んだような生活を送っていたころ、テレビで「特攻野郎Aチーム」を見た。この作品を解説する淀川長治が嬉々として喋っていて、淀川さんはこのシリーズが大好きなんだな、と感じた。
実際に見てみると、荒廃した心を優しく癒してくれるようで、とても気に入った。何が好きかといえば、4人の登場人物のキャラクターが魅力的で彼らが厚い友情で繋がっていることがよかった。人との関係に飢えた私にとって慰めだった。
 
4人のAチームのメンバーでは、リーダーのハンニバル・スミス大佐が一番好きだ。彼は表の顔は映画のエキストラでいつも失敗ばかりしているが、Aチームのリーダーとしては大胆な作戦実行でいつも成功し、見ている私たちをスカッとさせる。
ハンニバルを演じたのは、ジョージ・ペパード。彼の代表作は、オードリー・ヘップバーンと共演した「ティファニーで朝食を」だろう。この二枚目俳優がハンニバルのような愉快な男を演じるのが面白かった。
 
ティファニーで朝食を」でジョージ・ペパードは、オードリー・ヘップバーン演じる娼婦と同じアパートに引っ越して来る。オードリーは茶トラのネコを飼っている。二人は次第に惹かれあっていくが、ある日タクシーの中で大ゲンカ。雨の中、茶トラを放り出してしまう。しかし、正気に戻った二人は茶トラを捜す。雨に濡れた茶トラを見つけた二人は、茶トラを挟んで熱い抱擁を交わすラストシーン。
 
映画には多くのネコが出てくるが、芸達者なネコの多くが茶トラであることが興味深い。私は茶トラが一番好きで、「ゲキトツ」というとても人のいい茶トラを数年間溺愛したことがある。彼は自由が丘にいる地域ネコで、大学の帰りによく会いに行った。
「ゲキトツ」が住む街に引っ越した直後、彼は姿を消し、以来会うことはなくなった。
 
過去に子ネコを見殺しにしたこと、一人の人生を台無しにしたことを神様に許してもらえれば、私はいつか、ネコと暮らすことができるだろうか? いい人と幸せになることができるだろうか? できれば、好きな人とネコと私の三人暮らしがしたい。その夢が叶うように、罪を償っていきたい。
 


Breakfast at Tiffany's Opening Scene - HQ