バチカンの嵐 MONSIGNOR
人間、本当に辛い時、宗教は何の役にも立たない。
宗教だけではない。映画も、文学も、役に立たない。
本当に必要なものは、睡眠であったり、クスリ、医療だと思う。
あるいは、大金であったり、幸運がやってくることかもしれない。
多くのものは役に立たないが、肌と肌が触れ合うことは、きっと救いになる。
私は独身で恋人もいないので、最近やっと触らせてくれるようになったネコの体温が唯一の救いだ。
私は、今とても辛い状態だ。22歳でうつ病になって、これまで心の激痛と戦ってきた。あまりの苦しさに、七転八倒したこともあるし、苦しみに耐えられず自殺を企画したこともある。
だが、今の苦しみは、これまでと違う。心の痛みを感じない。喜びも悲しみも感じない。笑いも涙もない。ただただ、心と身体のエネルギーが低下している。何をするにも、気力が湧かない。食欲もない。
生涯でもっとも辛い。
いい人が教皇の時代はいい。だが、悪人が教皇になると最悪だ。「スポットライト」で性的虐待を隠蔽し続け、更迭された枢機卿は教皇にもっとも近い人物だった。もし、この事件が暴かれることなく彼が教皇になっていたら、私はカトリック教会には加わらなかった。
この映画はバチカンが上映差し止めの運動を起こしたが、全世界で公開された。主演のクリストファー・リーブは後に馬術競技で障害飛越の際、落馬して不自由な身体になった。そのため、若くして天に召された。バチカンが仕組んだという陰謀論もささやかれた。
二千年の歴史があるカトリック教会といえども、所詮は人間が作ったものだ。いつかは朽ちる。
しかし、信仰は決して捨てることはできない。イエスが救い主キリストであることは、私の人生では否定はできない。これは、アメリカで性的虐待にあった信者が語ったことと同じだ。
私は、神に、早くこの苦しみを取り除いてくださいと祈るしか、できない。