夢駆ける馬ドリーマー Dreamer: Inspired by a True Story
北カリフォルニアの競馬場でナイター競馬を観戦した時のこと。前の座席に、日本人が2人座っていた。ここで日本人に会うことは珍しい。南カリフォルニアのメジャーな競馬場とは違い、マイナーな競馬場で、その上サラブレッドの競馬ではなく、クウォーターホースの競馬だからだ。
日本人のうち、年配の男性が振り返り英語で話しかけてきた。私が日本語で返すと、びっくりした顔で「日本語がうまいですね」と言った。
そのメジロライアンが亡くなった。29歳だったそうだ。死因は老衰。長生きした方だろう。そのニュースに接して、あの夜の競馬場の空気を思い出した。
私は競馬場が好きだ。ヒコーキに乗ると、上空から楕円形のトラックを探してしまう。野球が好きな人が野球場に信仰にも似た感情を抱くように、私にとっての競馬場は聖地そのものだ。
競馬場では、自らの才覚ひとつで大金持ちになることも出来るし、全財産を失うこともある。そこでは学歴や生まれた環境なんて一切関係ない。競馬場以外で、学歴の有無が影響されない場所はごく限られている。
「フィールド・オブ・ドリームス」のレイ・キンセラが自らのトウモロコシ畑をつぶして球場を作ったように、私なら競馬場を作るだろう。
「夢駆ける馬ドリーマー」は、レース中の事故で安楽死になりかけた馬と、その馬を看病し、復活させる物語だ。人と馬、父と娘の愛情を描いた名作。レースシーンも素晴らしく、ここでもアメリカ映画の層の厚さを感じる。日本では決して作られることのない競馬映画だ。
この映画で語られる復活というテーマは、私が大好きなもので、いつか復活したいという私の願いが込められている。