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リリーのすべて The Danish Girl

この映画は、リリーという女性の人生を描いた作品だ。
彼女は、身体は男として生まれた。コペンハーゲンで風景画家として成功を収めつつあった。美しい妻も画家として世に出ようとしていた。
 
そんなある時、彼女は内なる女性性に気がつく。しかし、彼女が生きた1900年代の初頭、まだ性を越境することは多くの困難が伴った。今でこそ、性同一性障害という名前で広く知られ、徐々にではあるが世間の理解も深まっているが、以前は精神病として矯正の対象だった。また、彼女以前には手術によって本来の性に移行することはできなかった。
 
彼女は、今のトランスジェンダーと同じように、葛藤があり、摩擦があり、苦しみ悩んだ。彼女が幸運だったのは、彼女を理解し、世界最初の性別適合手術を行ってくれる医師が見つかったことと、かつての妻、そしてパリで画商として成功している幼なじみの理解と応援があったことだ。彼女はドレスデンで手術を受けて、女性となった。
当時の手術は、1回目に男性器の切除を行い、体力が回復してから造膣手術を行う。この2回目の手術は難しく、結局リリーは命を落とすことになる。
 
彼女の人生は幸せだったのだろうか? もし、現代に生まれていたら、もっと安全に性別適合手術を受けることができ、手術後は女性としての人生を楽しむことができただろう。それでも、彼女は幸せだったと私は思う。同じ悩みを持っていてもそれを叶えることができなかった人はたくさんいるからだ。
 
彼女は手術を受けた後、半生を綴った。それは後年出版され、同じ悩みをもつトランスジェンダーたちを励まし勇気づけた。
 
よく言われる。このような人たちは神様が間違って作ったと。しかし、それは違う。神様は決して間違わない。神様の行うことには全て意味がある。それを人間の頭で理解することはできない。だが、私はこう思う。トランスジェンダーとして生まれて、その後どう生きたかを神様は見ていると。
キリスト教では召命という言葉をよく使う。トランスジェンダーとして生まれた人はきっと何らかの役割があるはずだ。
 
この映画は、単なるトランスジェンダーの映画ではない。愛について、人生について、幸せについて深い洞察力と温かい眼差しで語った傑作映画だ。多くの人に観てもらいたい。