みゆき野球教室

ダメ人間の由佳さんが毎日0時に更新しています

(ハル)

私が最初に買ったパソコンは、1995年だった。競馬の予想のため、そして競馬の在宅投票のために買った。
 
その日は日本ダービーの当日で、競馬場へ行く前に新宿のヨドバシカメラで購入した。今ではパソコン売り場は広く大きいが、当時はまだWindows95以前で店の片隅や地下など目立たぬところで販売していた。
 
パソコン本体とプリンタを買い、30万円くらいしただろうか。当然一括では買えなかったので、月賦で買った。買ったはいいが、とても罪悪感を覚えた。
 
重い足取りで競馬場に着き、パソコン代を競馬で回収しようと思った。そして愛機にその日のダービー馬の名前を付けようと思った。
 
さて、本番のダービーは2番人気のジェニュインが勝つと思い、馬券を買った。愛機もジェニュインになるはずだった。しかし、勝ったのは1番人気のタヤスツヨシ。あまりかっこいい名前ではない。
 
打ちのめされて電車で重い体を引きずり帰ったのを覚えている。愛機には名前を付けなかった。
 
大金を出して買ったパソコンは、その後の私の人生を大きく変えることになる。
 
当時のパソコンには、パソコン通信NIFTY-Serveの入会キットが必ず付いていた。このNIFTYもパソコンを買った理由の一つだ。噂では競馬や乗馬の集まりがあり、現役の調教助手や騎手も参加しているらしい。ここでそのような人と出会えば馬券も当たるようになると思った。
 
調教助手や騎手と仲良くなり、美浦まで馬に乗りに行ったり食事をしたが、馬券にはつながらなかった。競馬はあらかじめ勝つ馬が決まっているという陰謀論を説く人がいるが、それは間違っていることはよくわかった。騎手は命をかけて騎乗するし、厩舎スタッフは全力で馬を仕上げてくる。それがわかっただけでも収穫だった。
 
パソコン通信はインターネットとは違い、文字だけでコミュニケーションをとる。これは面白かった。初めてコマンドを打ち込んで、応答があった時は感動した。
NIFTYでは漢字+カタカナのハンドルを使っていた。ちょうど、ショーンなんとかと同じ様に。私も自分をよく思われる様にしたかったんだろう。
 
パソコン通信のが縁で結婚した友人もいる。これをパソ婚と言うらしい。
森田芳光の「(ハル)」は、パソコン通信で出会った男女の物語。今観返しても切ない。
 
競馬ファンでもある森田は、私と同じように競馬の情報を得るためにパソコンを買ったそうだ。
 

広告を非表示にする