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偽牧師 The Pilgrim

経営コンサルタントを自称する男性が学歴を詐称していたことがばれて、表舞台から消えることになった。彼は高卒にもかかわらず、ハーバード経営大学院でMBAを取得し、フランスにも留学したとしていた。
 
もちろん、嘘は良く無い。それを利用して金儲けをしていたらなおさら良く無い。しかし、私は彼を叩けない。学歴の無い辛さを嫌というほどわかっているからだ。
 
「学歴なんて関係無い」、「学歴がなくても立派な人はたくさんいる」。綺麗事ではそう言うことが多い。確かにその通りだが、労働市場においては中卒や高卒は圧倒的に不利だ。生涯賃金も圧倒的に少ないし、学歴が無いとスタートラインにすらつけないことの方が多い。
 
この経営コンサルタントを自称する男性がここまで活躍できたのは、裏返せば、いかに社会が見た目や学歴に影響されるかということの証明だろう。彼が高卒を告白し、顔もそれなりだったら世に出ることはなかったと思う。
 
がんばれば誰でも高い学歴を身につけられるかといえば、それは違う。東大生の家庭の多くは年収950万円以上だし、お金が無いと進学もそのための勉強もできない。海外のように奨学金が充実していない日本においては、どこで生まれるかで人生が決まってしまう。
 
それを考えると、私はその男性を擁護したくなる。
彼のような小者は全力で叩かれるが、国会議員のバッジを付けていながら悪いことをするセンセイ方は全くの無傷でいられるニッポンは本当に美しい国だ。
 
喜劇王チャップリンの初期の名作「偽牧師」は、脱獄した囚人が牧師に扮して逃亡するというコメディだ。私が大好きなエドナ・パービアンスが出ている。彼女がチャップリンと共演するのはこの作品が最後で、この後エドナ主演でチャップリンは監督だけに徹した「巴里の女性」が作られる。
 
そういえば、日本には偽牧師や偽神父がたくさんいる。結婚式場に作られた「教会」を舞台にする白人で金髪の外国人がこの役を多く演じている。彼らは牧師のライセンスを持っていないし、神父の叙階を受けていない。
 
このような人たちをありがたがる社会が、先に挙げた経営コンサルタントを自称する男性を生み出したと私は考えている。