タンポポ
オムライスが好きだ。
この食べ物は子供が好きなものとして知られるが、私が好きになったのは大人になってからだ。
子供の頃は、むしろチキンライスの方をよく食べた。チキンライスといっても、ビンボーだったので鶏肉ではなく、安物のプレスハムを入れていた。それでも、母は料理が上手だったので、美味しかった。
大人になってからは、オムライスもチキンライスもあまり食べる機会がなかった。
そんなある時、仕事で行った街でたまたま食べたオムライスがとても美味しくて、以来ハマった。
それはどの街にもあるような平凡な中華料理店。高級店ではない。地元の人しか来ないような店だった。
中華料理店でオムライスというのも変だが、何か予感があり、オムライスを注文した。美味しかった。以来、電車に乗ってその店でオムライスを食べるようになった。
南関東で一番美味しいオムライスだと思っている。
川崎市中原区にある「新華」という店だ。店主とその妻、そして息子だけでやっている。
カウンターに座り、店主が鍋を振るのを見るのが好きだ。鍛え上げられた技術で、どの店にも負けないオムライスを作る。
前述の新華は、具には豚肉を使っているが、高社郷は鶏肉を使っている。
この2店以外にもたくさんの店でオムライスを食べているが、この二つの店には遠く及ばない。
でも、私のビンボー舌にはこの料理は受け入れない。昔ながらの薄焼きのたまごで巻くスタイルのオムライスが好きだ。
そういえば、パートでたいめいけんの三代目がやっている店で働いたことがある。そこで、若いコックさんがフライパンにふきんを入れてそれを振る練習をしている姿を目撃した。美味しい料理は、そんな料理人の努力で作られていることを学んだ。