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日本沈没

ある若手の映画監督が、ラジオで自身の体験をもとに夢の叶え方を話していた。要約するとこうだ。
 
まず、東京に生まれる。
生まれる家の世帯年収は950万円以上。これは東大生の多くの家庭が950万円以上の所得があるから。
長男・長女に生まれてはいけない。
容姿は、最上と中間の真ん中。
教育には十分に投資をしてもらい、習い事は必ずやらせてもらう。
歯列矯正はなるべく早いうちに。
海外での生活も体験させてもらう。
社会に出る時は、親のコネを最大限に使う。
たったコレだけで、努力をしなくても夢を叶えることができるそうだ。
 
聴いていて感心したのは、さすがに映画監督だけあって、人生の本質を理解しているということ。綺麗事ではいくらでも反論できるが、反論したところでこの真理は覆すことはできない。
 
このように人生とは、努力が一切影響しないところで決まることがある。否、そちらの方がむしろ多いだろう。例えば、第二次世界大戦の時にドイツでユダヤ人として生まれていたら、あるいは現在でも難民になる運命のもとに生まれていたら、その後襲ってくる悲劇から逃れるのは困難だ。まれに、そこから抜け出して幸せになる人がいるが、レアケースだからこそ注目され、記憶に残る。多くはガス室に送られるか、難民として避難の最中に命が尽きる。
 
戦争や難民問題は、昔の話であったり、遠い外国の話だと思うかもしれない。しかし、いつ日本がその悲劇に見舞われるかもしれない。日本は難民に対して冷たい。アベシンゾーは海外の記者会見で外国人記者から台本にはない難民問題について聞かれた時、「移民」、つまり安い労働力として答え、世界の失笑を買った。また、戦争もいよいよ現実味を帯びてきた。日本人が困った時、世界は助けてくれるだろうか?
 
日本沈没」は、小松左京の原作を映画化した大作だ。私は小学生の時に観て、あまりにショッキングな映像にトラウマレベルの衝撃を受けた。映画を観た翌日は、熱が出て学校を休んだほどだ。
 
近く異変により、日本は海に沈む。ある者は死に、またある者は海外へ避難する。祖国を失った民族の未来は明るいものなのか? それとも。
 
映画は1973年の製作なので、ミニチュアを使った特撮は今見ればとても安っぽい。しかし、この映画が多くの人の支持が得られたのは、人間を描き切ったからだろう。祖国を失う悲しみは、筆舌に尽くしがたいはずだ。それが十分に描かれている。
 
この作品は、テレビドラマにも、ラジオドラマにもなり、2006年には映画はリメイクもされた。
今一度、この作品を観て、人間を弄ぶ運命について考えるのも悪くはない。