みゆき野球教室

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ブリット Bullitt

まだ助手席のシートベルトが強制ではなかった時代。広島の親戚を訪ね旅に出た。
ヒコーキを降りて親戚の夫が運転する車の助手席に乗った。私は必ずシートベルトをする主義なので、いつものようにそうすると汚い広島弁で罵られた。
「大丈夫じゃけぇ。ワシの運転が信じられんのか?」。
あいにく、神様とイエスしか信じるものはない。
男の人は、特に地方の人は運転を否定されると逆上することを学んだ。しかし、自分の命を守るためだ。罵声を無視してシートベルトを締めた。
 
去年の夏、バンコクに暮らした。現地ではよくタクシーに乗った。初乗りが日本円で100円ちょっとなので気楽に乗れる。ただ、バンコクのドライバーはプロもアマもみんな運転が荒い。スピードも出すし、急に車線変更もする。当然シートベルトをしたいが、後部座席のシートベルトは壊れていることが多い。幸い、事故には遭遇しなかった。乗車拒否に泣かされることはあったが。
 
私は車の運転免状は持っているが、全く運転しない。以前は自家用車を持っていたが、ある日を境に車を捨てた。免許もただの身分証明書として使っている。
私のような金持ちは運転するよりも、金を払って運転が上手い人に運転してもらう方が楽でいい。後ろの席に座って本を読んだり、音楽を聴いたり、仮眠をとることができる。
 
安心のために、大きめの車を運転してもらっている。大きい車はいい。ぶつかった時も、安全だ。
でも、いいことばかりではない。二つの欠点がある。車体が大きいので狭い道に弱い。行き先によってはギリギリの道を通らなければならない。そして、最大の欠点は車体に大きく「東急バス」と書いてある点だ。
 
車を扱った映画は多い。名脇役と言われるが、映画によっては主役にもなる。
「ブリット」は、カーアクションが有名で、後に作られる映画のお手本になった。
サンフランシスコを舞台に繰り広げられるカーチェイスは、実際のスピードで車を走らせ、撮影されている。ごまかしは一切ない。
ただ、サンフランシスコの街を知る者にとっては、ありえないコースで車を走らせている。東京で例えれば、銀座を走っていた車が次のシーンでは新宿を走り、また次は銀座に戻っているといった具合に。
それでも、この映画が果たした役割は大きい。1974年に「バニシングin60″」が作られるまで、カーアクション映画の王座に君臨していた。