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Coming Out Story ~カミング・アウト・ストーリー~

ココロの弱い私だが、身体はどうやら強いようだ。
去年の夏、大きな外科手術を受けた。集中治療室で目覚めたあとは、いたって予後は順調で、翌朝自分の病室に戻ってからも食欲は普通にあるし、痛みも感じなかった。数日後の歩行訓練も、ナースの介助なしに普通に歩けたし、めまいも吐き気もなかった。それには医師もびっくりしていた。
 
だが、ココロは本当に弱い。ココロも身体も強ければ人生を楽しめたかもしれないが、こればかりはどうしようもできない。身体はトレーニングで強くなるが、ココロを強くする方法を私は知らない。
自己流でココロの鍛錬を試みたこともあったが、マイナスに作用するばかりだった。
どのみち、あと数年から数十年の人生だ。騙し騙し生きて行く以外にはないだろう。
 
日本映画大学の学生が作った映画のメイキングを観た。卒業制作だが、これからプロとして巣立っていくわけだから、真剣だ。現場では意見が衝突し、監督がまとめる力が無ければ崩壊してしまう。もし、その現場に私が放り込まれたら、付いて行くことが出来ただろうか。監督を任されたら、現場をまとめることが出来ただろうか? 答えは否だ。私は才能に恵まれなかったことを感謝した方がいいのかもしれない。
 
日本映画大学の前身は、横浜放送映画専門学院という各種学校だった。映画監督の今村昌平が作った。多くの映画人、放送人、俳優、芸人を輩出した。
横浜駅前のスカイビルに学校があり、私も訪問したことがある。
のちに、新百合ヶ丘駅前に移転し、三年制の専修学校 日本映画学校となり、さらには日本で唯一の映画単科大学日本映画大学へと変貌していった。
 
その卒業生に梅沢圭という人がいる。彼は、「Coming Out Story ~カミング・アウト・ストーリー~」という映画を作り、その試写になぜか映画評論家でも映画監督でもない一介の映画ファンである私が招かれた。
 
映画は、土肥いつきさんという高校教師をしている女性が、生徒や学校、そして社会に対して「自分はトランスジェンダーである」とカミングアウトして、肉体も女性になるために性別適合手術を受けるというドキュメンタリーだ。彼女の周りにいる人は、みんな優しく、心が温かくなった。
 
上映後、監督をつかまえてお話を聞いた。とても気持ちのいい若者で、映画を愛していることがよく伝わってきた。
 
今村昌平は、常に「性」を通して「生」を表現する監督だった。学校でも、それを厳しく叩き込んだと読んだことがある。梅沢監督は、今村イズムを見事に継承した。