みゆき野球教室

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東京物語

日本は嫌いな国だが、現状他国に移住できないので、日本に住んでいる。

日本もなかなか便利な国だ。一番便利なのは、日本語が通じるという点。その他、交通の便がいい点は評価できる。

悪い点はいくらもあるが、政治的な面や社会的な面を除けば、高温多湿の気候がつらい。ラジオで聞いたのだが、バンコクから東京に来た人が暑さで参ったそうだ。納得できる。
 
日本の中でいろいろな場所に住むことを考えた。私は大阪が好きで、大阪のおばちゃんになるのが夢なので、移住の第一候補はこの街だ。しかし、今は政治が悪い。京都も好きな街だが、敷居が高い。温暖な気候に憧れて広島も候補に入れたが、この街には悪い思い出が多い。沖縄もいいと思うが、この島に移住したほとんどの人が失敗している現状を考えると、躊躇する。
 
となると、東京に住むのが最適な選択といえる。日本は嫌いだが、東京は好きだ。東京の食べ物はおそらく世界一おいしい。街もきれいだ。クルマを持たなくても不自由なく暮らせる。
美しい街東京も、30年前は汚い街だった。記憶は薄れているが、当時の映画を観るとよくわかる。東京が美しくなったのは、ほんの最近のことだ。
 
小津安二郎の作品で一番最初に観たのは「東京物語」だ。映画人を目指していた時、教科書的に観た。その時は感銘を受けなかったが、後に小津ファンになって見返してみると、味わい深い作品だと気付いた。
 
尾道に暮らす老夫婦が息子たちを訪ねて東京にやってくる。息子たちも東京での生活があり、忙しくて両親の世話ができない。良かれと思って熱海の温泉に行かせるが、騒がしくてとてものんびりはしていられない。早めに東京に戻ると、娘に嫌味を言われる。大都会の中で老人たちがさまよう様が悲しい。
 
そんな二人をただひとり、親身になって世話をするのは戦争で死んだ息子の嫁。彼女は、実の親のように老夫婦を労わる。
やがて、老夫婦は尾道へ帰るが、その道中、母親が息を引き取る。それがなんとも悲しい。
小津安二郎は「もののあわれ」を一貫して描いているが、この作品はその部分では最高傑作だろう。
 
ところで、東京の息子と娘が葬儀のため尾道に行く汽車だが、急行安芸だろう。調べてみたら、東京を21時に出て、尾道には翌日のお昼過ぎに着くらしい。寝台車と座席の車両を連結していた。座席で長時間の移動は大変だったと思うが、昔はこれが当たり前だったようだ。
 
尾道広島県だが、小津安二郎は広島とは縁もゆかりもない。しかし、この作品の後も「彼岸花」でラストシーン、広島に行くエピソードが出てくる。おそらく、同じ時期に松竹の脚本部に広島生まれの新藤兼人がいたためだろうと推測する。
 
さて、久しくこの作品を観ていないので、秋の夜長、時間を作って鑑賞しようと思う。