しゃべれども しゃべれども
私は落語が好きだ。
子供の頃は、父の仕事の都合で関西文化圏で育った期間が長い。
土曜日、学校が終わると急いで帰宅してテレビの前に正座。
これが終わると、また吉本新喜劇。そして、それも終わるとようやく友達と遊びに行くという生活だった。
お笑いに接して育ったが、とりわけ落語が好きな子供だった。当時は上方落語を多く聴いたが、東京の落語も好きだった。
東京に戻ってからは、寄席にも通うようになった。なかでも、新宿末廣亭で毎週土曜日の夜に行われる「深夜寄席」にはよく通った。これは二つ目の若い落語家が4人で500円という破格値でたっぷり噺を聴かせてくれるので、とてもいい企画だと思う。下手な噺家もいるが、これは伸びると思う逸材を見つけるのもこの深夜寄席の楽しみだ。
落語を題材とした映画は、あるようで実は少ない。今回はその中で「しゃべれども しゃべれども」を取り上げたい。
最初から最後まで落語のようなリズム感で進行するとても心地よい映画だ。
実は、落語を題材とした名作映画があり、読者の賢者の皆さんはおわかりかもしれないが、この作品についてはもっと先で取り上げようと思う。
さて、Apple Musicで落語を検索すると、思ったよりも少なくてビックリした。しかし、少ない中には柳家小さんの作品もある。小さんは三三の師匠の小三治の師匠である。つまり、三三から見れば小さんは大師匠ということになる。
私は、小さんが亡くなる前の高座を見る幸運に恵まれた。すでに声は弱々しく、そでからは孫の花緑が見守る状態だったが、名人芸は健在だった。
小さんの落語では、子供の頃からよく聴いた「うどんや」が好きだ。芸人は死ぬと芸まで天国へ持って行ってしまう。それが惜しい。